式部に意見あり、若年の時、衆道にて多分一生の恥になる事あり。
心得なくしては危ふきなり。
云ひ聞かする人が無きものなり。
大意を申すべし
貞女両夫にまみえずと心得べし。
情は一生一人のものなり。
さなければ野郎かげまに同じく、へらはり女にひとし。
これは武士の恥なり。
「念友のなき前髪縁夫もたぬ女にひとし。」
と西鶴が書きしは名文なり。
人がなぶりたがるものなり。
念友は五年程試みて志を見届けたらば、此方よりも頼むべし。
浮気者は根に入らず、後は見放す者なり。
互に命を捨つる後見なれば、よくよく性根を見届くべきなり。
くねる者あらば障ありと云ふて、手強く振り切るべし。
障はとあらば、それは命の内に申すべきやと云ひて、むたいに申さば腹立て、
なほ無理ならば切り捨て申すべし。
また男の方は若衆の心底を見届くること前に同じ。
命をなげうちて五六年はまれば、叶はぬと云ふ事なし。
尤も二道すべからず。武道を励むべし。
ここにて武士道となるべし。

聞書第一 一八一

紫式部に意見あり、若い時男色で一生の恥になることがあるから心得がないと危険である、
しかし言い聞かす人がいないので私が大意を申す
男色においても貞女2人の夫にまみえずと同じで相手は一生に一人とすべし、
でなければ陰間や売女と同じであり武士の恥である、
「約束した相手の居ない男は男に縁がない女と同じである」
と井原西鶴が書いているがこれは名文である、
しかしこれは人になぶられたりからかわれたりするものだ。
盟友なら五年ほど志を見届け頼むと良い、浮気物は相手にするな、長続きはしない、
互いに命を捨てあう者なればこそ他に関係をせがむ者がいれば厳しく振り切ることだ、立腹して切り捨てるべし。
色において二股をかけてはならない、ただただ武道に励むべし、さすればここにおいて男色も武士道となるべし。