何がし立身会議の時、この前酒狂仕り候事これあり、立身無用の由衆議一決の時、何某申され候は、
「一度誤これありたる者を御捨てなされ候ては、人は出来申すまじく候。
一度誤りたる者はその誤を後悔いたす故、随分嗜み候て御用に立ち申し候。
立身仰せ付けられ然るべきなり。」
由申され候。
何某申され候は、「その方御請合ひ候や。」と申され候。
「成程某受に立ち申し候。」と申され候。
その時何れも、「何を以って受に御立ち候や。」
と申され候。
「一度誤りたる者に候故請に立ち申し候。
誤一度もなきものはあぶなく候。」
と申され候に付て、立身仰せ付けられ候由。

聞書第一 五十