翌日の事は、前晩よりそれぞれ案じ、書きつけ置かれ候。
これも諸事人より先にはかるべき心得なり。
何方へ兼やくにて御出で候時は、前夜より向様の事万事万端、挨拶話、時宜等の事案じ置かれ候。
何方へ御同道申し候時は、先づ亭主の事をよく思ひ入りて行くがよし。
和の道なり。
礼儀なり。
又貴人などへ呼ばれ候時、苦労に思ふて行けば座つき出来ぬものなり。
さてさて忝き事かな、さこそ面白かるべきと思ひ入りて行きたるがよし。
惣じて用事の外は、呼ばれぬ所へ行かぬがよし。
招請に逢はば、さてもよき客振りかなと思はるる様にせねば客にてはなし。
いづれその座のすべを前方より服して行くが大事なり。
酒などの事が第一なり。
立ちしほが入つたものなり、飽かれもせず、早くもない様にありたきなり。
又常々の事にも、馳走など斟酌を仕過ごすも却ってわろきなり。
一度二度云ふて、その上にはそれを取り持ちたるがよし。
計らず行き懸りて、留めらるる時などの心得もかくの如きなり。

聞書第一 十八